鼠径(そけい)ヘルニアの日帰り手術と術後の経過について
「鼠径ヘルニア」は基本的に、治療をせずに自然に治ることはありません。特に、おとなの鼠径ヘルニアを治すには運動療法や薬ではなく「手術が必要」とされています。
ただ、鼠径ヘルニアの症状が出る場所が非常にデリケートな部分なだけに、恥ずかしさから受診を迷われている患者さんが多いのも現状です。また、手術を受けることになれば会社を長く休まなければならず、「社会復帰に時間がかかりそうで不安」という方も大勢いらっしゃいます。
そこで近年注目されているのが、「鼠径ヘルニアの日帰り手術」です。
初診と術前検査のために1日、手術当日に1日と最短2日間で鼠径ヘルニアの手術を受けられること、キズが小さく痛みの少ない腹腔鏡での手術により術後は入院の必要がなく、即日帰宅できることが鼠径ヘルニアの日帰り手術が選ばれている理由です。
鼠径ヘルニアの患者さんの中には、「鼠径ヘルニア手術後の痛みが不安」「術後の傷のケアはどうすればいいのか」「本当に日帰りができるか心配」など、はじめて受ける手術に大きな不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。
今回は、はじめて鼠径ヘルニアの手術を受けられる方や、もしかしたら鼠径ヘルニアかもしれないと思われている方向けに、「鼠径ヘルニアの術後の痛み対策」について色々と紹介させていただきます。
鼠径ヘルニアの術後の痛み対策について
先天的な要因で鼠径ヘルニアを発症した子どもの場合、成長に伴い自然と鼠径ヘルニアが治るケースもあるようですが、おとなになってから発症した後天的な要因での鼠径ヘルニアの場合は、自然に治ることがないため完治には手術が必要になります。
ただ、はじめて手術を受けられる方の中には、「術後の痛み」に大きな不安を抱えていることが多いことから、鼠径ヘルニアの症状を自覚しながらも、そのまま放置してしまうケースが少なくありません。
鼠径ヘルニアの術後の痛み対策に有効な「日帰り手術」
太ももの付け根や下腹部あたりに発生する鼠径ヘルニアは、手術を受けることで治すことのできる病気です。ですが、以前までの鼠径ヘルニア手術の場合は、手術後に生じる「痛み」によって座ったり、しゃがんだりすると痛みが生じて、すぐに上体を起こし歩くことが困難なことが問題となっていました。
鼠径ヘルニアはデリケートな部分に発症することから、恥ずかしさのあまり治療を受けずに先伸ばしている方が多いのですが、「手術を受けたことで痛みが強かったら、社会復帰が遅れるのでは?」と不安で手術を受けずにいる方も少なくありません。
しかしながら、近年ではこのような術後の痛み対策に有効とされる鎮痛薬や医学論文が登場したことで、患者さんの術後の痛みへの恐怖心を和らげ、より積極的に治療を受けられるように配慮した鼠径ヘルニア手術が行われています。
それが、今回紹介する「鼠径ヘルニア日帰り手術」です。
キズが小さく痛みの少ない「日帰り手術」
従来の手術法では、鼠径部を約5cm切開して処置をすることから、手術後は少しはれが残り、切開した部分に強い痛みが生じるといったデメリットがあり、患者さんにとっては身体的にも精神的にも大きな負担がありました。
その一方で、鼠径ヘルニア日帰り手術の場合は、手術後のキズが小さいだけでなく、痛みも少なく済むため、手術を終えてから数時間後には自力で歩けるようになり、当日に退院が可能といった特徴があります。
鼠径ヘルニア日帰り手術は、日帰り手術に適した全身麻酔を使用することで手術中の痛みは全くなく、完全無痛の状態で手術を受けることができます。また、全身麻酔に加えて、「腹腔鏡(内視鏡)」を用いて施術することで、キズが小さく目立たず、手術後の痛みも少ない傾向にあります。
鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術では5mm~3mmの細かい手術器具を採用していることから、1か所のキズの大きさを5mm以下に抑えることができるので、従来の手術法に比べて術後の痛みを大きく軽減できるようになりました。
鼠径ヘルニア日帰り手術の痛み対策とは?
鼠径ヘルニアの手術方法や麻酔を使用する範囲などは、診察の際に主治医と相談しながら決めることができますが、日帰り手術を希望される場合は全身麻酔と腹腔鏡による日帰り手術が勧められています。 鼠径ヘルニアの日帰り手術は手術を受けた当日に帰宅できることが一番の特徴ですが、手術を受けていることは確かなので全く痛みがないというわけではありません。また、手術後の痛みは患者さんによって感じる度合いが違うことから、日帰り手術では専門の医師とスタッフが患者さんそれぞれの痛み具合や状態などを徹底管理することで、一人一人に適した手術後の痛み対策を行っています。
例えば、鼠径ヘルニア日帰り手術では、手術後の痛み対策として充分量の局所麻酔薬をキズに注入、あるいは硬膜外麻酔を注入して手術後の痛みが軽減されるように対策をします。手術直後は点滴の鎮痛剤を加える他、数日間定期的に鎮痛薬を内服するように2剤併用療法を採用することで帰宅後の痛みにも対応しています。 尚、それでも不十分な場合は頓用の鎮痛剤の処方や、鎮痛剤の副作用(吐き気など)対策を行うので、鼠径ヘルニアの手術後のサポートなどの体制は万全と言えます。
手術後の痛みや、手術後のサポートについて不安な点や気になることがある場合は、術後の痛みへの対処法について、鼠径ヘルニアを専門とする医療機関に問い合わせ、不安を解消された上で治療に入られることをおすすめします。
鼠径ヘルニア手術のキズの治りは?
鼠径ヘルニアの日帰り手術は腹腔鏡(内視鏡)で行っているため、キズが小さく、キズ痕が目立たないといった特徴があります。患者さんの症状や鼠径ヘルニアの種類などによって切開する部分は異なりますが、いずれも3mmから5mmと小さなキズで済むので、腹腔鏡で手術を受けた後は1週間ほどでキズ痕が目立たなくなってきます。
手術後1週間はキズ痕に触れるとやや堅く感じる場合がありますが、キズ痕は時間が経つほどきれいになるので、1年以上経過した後は患者さん自身もどこを手術したか分からないほどキズ痕がきれいになることもあります。 ケロイド体質の方は、キズ痕がミミズ腫れのように残ってしまうことがありますが、腹腔鏡で行う鼠径ヘルニア手術であればキズが小さく大きなキズ痕が残る心配がないので、このような方にこそ腹腔鏡による鼠径ヘルニア手術が勧められています。
鼠径ヘルニア手術後の仕事復帰の時期
あまり会社を休めない、自宅を長く留守にできない、入院したくない、といった方々に選ばれているのが鼠径ヘルニアの日帰り手術です。最低2日間(初診日と手術当日)確保できれば、鼠径ヘルニアの腹腔鏡(内視鏡)手術を受けることができます。
仕事を休んで手術を受けられる方や自営業の方の中には、「鼠径ヘルニアの日帰り手術を受けた後はどのくらいで仕事復帰できるの?」と気になられている方も多いかと思います。
事前の問診や検査を実施した上で判断するため、帰宅できるタイミングは患者さんによって異なりますが、ほとんどの方が鼠径ヘルニアの手術後1時間ほどで帰宅されることが多いようです。
腹部に力を入れないデスクワークの場合は手術の翌日から再開することができますし、運送業や立ち仕事などお腹に力が入りやすい仕事の場合は、医師の指示のもと患者さんがつらくない程度に少しずつ再開することができます。
「鼠径(そけい)ヘルニア」の初期段階は、ふくらみやこぶに気づいても違和感がある程度で痛みがない場合があります。ゆえに、症状に気づいていてもあまり深刻に考えず、長く放置してしまう方が多いようです。鼠径ヘルニアを放置したことで、「嵌頓(かんとん)」という状態になってしまえば緊急での手術が必要になるので、そのような事態を未然に防ぐためにも早急に鼠径ヘルニア専門の医療機関にて診察や治療を受けられることをおすすめします。
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